読んで学ぶ 心臓弁膜症

― 対談記事 ―

倉敷中央病院 TAVI ・ハートチーム メンバー集合写真

安全・安心なTAVI を行うために。
チームの結束を高めるコミュニケーション。

TAVI は多職種連携で成り立っているが、そのチームビルドの要となるコミュニケーションはどういったものであるべきか。
倉敷中央病院の方々にインタビューを行い、それぞれの立場で考えるチームコミュニケーションについて紐解いていく。

TAVI は多職種連携で成り立っているが、そのチームビルドの要となるコミュニケーションはどういったものであるべきか。
倉敷中央病院の方々にインタビューを行い、それぞれの立場で考えるチームコミュニケーションについて紐解いていく。

安全・安心なTAVI を行うために。
チームの結束を高めるコミュニケーション。

TAVI は多職種連携で成り立っているが、そのチームビルドの要となるコミュニケーションはどういったものであるべきか。
倉敷中央病院の方々にインタビューを行い、それぞれの立場で考えるチームコミュニケーションについて紐解いていく。

写真左から、白崎 頌人さん(臨床検査技師)、福 康志先生(循環器内科医)、平尾 慎吾先生(心臓血管外科医)、中川 忍さん(診療放射線技師)

TAVI ・ハートチームに対する最初の印象

福 康志先生

(福先生)
スタートは、2010年の春。循環器内科、心臓血管外科などから施設代表として選出されて、他の病院も含めてカナダの施設に勉強に行ったんですよね。それまでハートチームというような組織で仕事をするようなことがあまりなかったんですよ。当時は、一つの病気に関してそれぞれの分野の専門家が積極的に関わるっていうことがあまりなかった。ですからすごく新鮮だったんですよね。こんな形でTAVI という治療をやっていくんだというのをすごく新しい視点だなと思ったのはよく覚えてますね。

平尾 慎吾先生

(平尾先生)
僕はTAVI の立ち上げを2回経験して、2021年に倉敷中央病院に赴任しましたが、このチームはすごく仲がいいというか、結束力があると感じたんですよね。最初から快く受け入れてもらえて、心臓外科と循環器内科の関係性がおそらくずっと良かったのだろうと感じました。だからお互いにこういう新しいことをしましょうとか、様々な意見を言い合って、実際にきちんと実践していく。コメディカルの方たちも一緒に和気あいあいとされていたので、非常に入りやすいチームだという印象でした。だからこそ、循環器の先生方に色々質問を投げかけたり、自分の提案をしたりしやすい雰囲気がありましたね。

白崎 頌人さん

(白崎さん)
僕が関わったのは多分2017~18年、自分がエコーをできるようになって、ローディングから関わらせて頂いて。もうチームとして完全に出来上がっている感じだったので、初めて入ったという感覚がほとんどなくて。どちらかというと失敗して学んだ方が印象として残っています。元々はTAVI の立ち上げメンバーに居た大先輩が居まして、カテ・TAVI の手技に関することを手取り足取り教えてくれた。そこから入っています。

中川 忍さん

(中川さん)
2013年ぐらいだったと思うのですが、TAVI を当院でするということになって、先生からちょっとレクチャー頂いた。その時は経食道エコーで弁輪サイズを計測して、CTではアクセスルートだけ見ればいいみたいなニュアンスだったんですけど、いざ波に乗ってくると、弁輪や弁尖を細かく測るように言われてプレッシャーでしたね。

(福先生)
そうそうそう。経食道エコーでの弁輪径で、生体弁のサイズが決まっていたんですよ。CTの計測で生体弁のサイズを決めましょうと言われ始めたのは、丁度日本でTAVI ができるようになった頃でした。だから我々も本当に経験が少なくて。ああだこうだ言いながらやってたよね。

(中川さん)
計測項目もどんどん増えて大変でした(笑)

ハートチームが出来上がったと実感するタイミングとは

(福先生)
「出来上がった」っていうことはないんですよ。症例がある度にレビューをして、今度やるべき症例をカンファレンスで挙げて、心臓血管外科と循環器内科でディスカッションをするわけですよね。手技は、基本的に復習することでより高めていくという視点でやりますから。コメディカルからもフィードバックがありますし、どんどん高めていっているという意味では、どこで完成したというものはないと思うんですよ。そして、TAVI かSAVR かという治療選択の判断基準も日々アップデートされますし、それに合わせて我々もアップデートする。だからずっとお互いに成長していっている感じなんじゃないかなと思いますけどね。

意見を言い合える環境の土台 チームコミュニケーションの成熟

(福先生)
いやーでもね…、TAVI の方が良い、もしくはSAVR の方が良いという思惑のぶつかりはあるわけです。でもそれってお互い真剣勝負でやってるからこそ。元々は外科の分野だったところに、内科が参入してきているわけですし、SAVR の方が好ましい治療であるなら、わざわざTAVI にしましょうという話ではない。結局一番重要と考えるのは、患者さんに最もリスクを背負わせない、その時点でのハートチームとしての一番良い方法を見つけ出すこと、これを外科の先生およびTAVI チームの人たちとやってきたというのはあると思うんですよね。そのベースとして、良好なコミュニケーションがとれていたからこそやってこれた話じゃないかなと。この積み重ねがチームの成熟につながるのかなと思いますね。どうですか、中川さんとか。

中川 忍さん

(中川さん)
そうですね。
一同 (笑)

福先生と平尾先生が談笑する様子

(福先生)
「そうですね。はい。」って感じになるじゃないですか!(笑)そりゃ先生が言われるとそうですよね、みたいな感じとか。

(中川さん)
(笑)僕らは循環器内科の先生とはカテ室で接点があって、心臓外科の先生とはステントグラフトで接点があって、だからもう和気あいあいとしていて、最初から雰囲気は作ることができていた印象ですね。

平尾 慎吾先生

(平尾先生)
もし僕がTAVI を全く知らない状態で、それを実践していなかったらギスギスしていたかもしれないですよ。ここではお互いをよく知り、様々な学会や情報共有を通じてディスカッションができる。TAVI の際には患者さん目線で物事を決めていくという立場に僕も一緒に加わることができています。ある意味ハートチームに入っているメンバーって、外科医とか内科医とかじゃなくて「TAVI 医」なんですよ。大動脈弁疾患医というか、何かそういうイメージのチームになっているのではないかと思います。

若手への教育やチームへの声がけの工夫

福 康志先生

(福先生)
カンファレンスにおいて、最初は、循環器内科医、心臓血管外科医、麻酔科医、放射線技師、臨床工学技士、TAVI コーディネーターという方もいたり、手術看護師もいたり、色々来てもらっていたけれど、今は働き方改革のこともあったりして、同じ時間に全員が集まるのは難しいですからね。今は、話し合う内容は最小限にしてなるべく短い時間で終わらせようと要点だけ話すようにしていますね。あとは偶然会った時に話すとかもありますし、チャットとかもうまく使ってコミュニケーションとっていますね。

白崎 頌人さん

(白崎さん)
深くは考えていないですね。元々カテ室で従事している人が多くて。となると先生とのコミュニケーションも取れている。大体の流れもわかっているので、TAVI における手技でチェックすべきポイントを要所要所で教えていけば、初TAVI への不安は無くなっていくのかなと思いますね。

(福先生)
そうだね。カテ室で会う人ばっかりだからTAVI の時のコミュニケーションは問題ないかな。

中川 忍さん

(中川さん)
僕らの世代はいいんですよ。しっかりコミュニケーションを取れてるんで。でも、血管造影検査室って3年目ぐらいの若手が配属されたりして。それで「あれ、おかしいな。」と思ってこの先生方のチームに言えるか、そして手技を止められるかっていうと、結構きついと思うんですよ。

一同 (苦笑)

(中川さん)
だから帯同して指導する時、何かおかしいなと思ったら僕が発言するのではなくて若手に発言してもらう。こちらから若手に質問を投げかけてみて、分からないなら先生に一回聞いてみてと。何か先生やチームと会話をする回数を増やしてあげたら良いのかなと思ったりします。

(平尾先生)
おそらく、以前の若手外科医は、鼠径部を開けるだけで、カテをただ持って見ているだけという感覚だったと思うんです。けれどCTで大動脈弁の計測をやりはじめてから、TAVI とか大動脈基部に対する解剖の興味がすごく沸いている。機器の操作、透視画像を見ることが楽しくなっている。コミッシャーアライメントの話をしているとすごく興味を持ってくれる。今の若手はTAVI に積極的になっているイメージで、僕らが何かをしてあげるというよりは、すでにTAVI のおかげで若手のほうから積極的に関わってきてくれている印象があります。

(福先生)
オペレーターに関しては段階的に手技を教えていく形になりますが、色々勉強して順番にやってもらう中で、僕が決めているのは、突然やってもらうということ。若手の先生で手技の途中までは問題なくできるようになったと僕が判断したら、その先の手技をしてもらうことになりますが、そのタイミングに関しては、今日やるよとは伝えない。でどれだけやれるかを見るんです。

平尾 慎吾先生

(平尾先生)
意地悪だな〜(笑)

対談している様子

(福先生)
意地悪だけど、基本的にはやってみないとわからない。あとは自分がやっているつもりで見てみないと、次にどうするかって覚えられないんだよね。そうしないと、きっと緊張感もないわけですよ。いつ自分が回ってくるか、という緊張感もいいんじゃないかなと。基本的には見ておいてもらって、僕らが話をしているものを理解してくれているかっていうところを見てるわけなので。手技的にはそういうところで学んでいってほしいなと思いますね。

これからTAVI に携わる全てのチームに向けて

対談している様子

(福先生)
手技を積み重ねていく中で、トラブルが起こらないことはない。やっぱりチームとしての真価が問われるのはそのタイミングだと思います。想定外のことが起きて、外科医に頼むのがちょっと恥ずかしいといった感覚はダメだと思いますし、最善の解決方法へ導くために、コミュニケーションをとって良いチームを作っておくことが重要だと思いますね。

(平尾先生)
その通りですよね。全体的なまとまりに加え、個々の力をそれぞれつけていくという向上心を持っていないといけない。それぞれが新しい知識・情報をキャッチして、力を集結して、ひとつの大きな強いチームを作っていくという目標を立てておかないと。うちのチームは常に新しい知識が入ってくるので、どのメンバーにとっても成長を実感しやすい環境だと思います。それが強みになっているのではないでしょうか。

(中川さん)
たとえば計測して、理論的にここどここがこう、という話じゃなくて、実際にカンファレンスに出て、先生がどういったことを気にして、ディスカッションしているのかを身に沁みて理解する。分からなかったら、ダイレクトに聞くといった姿勢が必要だと思います。

(福先生)
時々、「この計測おかしいんじゃないの?」とか率直に思ったことを言ったりもしますね。

(白崎さん)
コミュニケーションですよね。何事も忌憚なく言えるような環境を先生方が作ってくれていて、僕たちコメディカルからも気付きや不安を発信できる。それを伝えなければどんどん後手になってしまうケースもあると思うんですよ。「おかしい」と伝えると、先生方が意見や説明をしてくれて、不安を解消してくれる。それなら大丈夫だなと。そういったコミュニケーションってのは非常に大事なんじゃないかなと思いますね。

(平尾先生)
心理的安全性の高いチームだよね。

(福先生)
良い言葉だね!
色んな人が色々言えるチームって間違いなく大丈夫だと思うんですよ。オペレーターだけが喋るとか、周りの方が何も言わない状況はやっぱり良くないかなと思いますね。

(平尾先生)
昔の外科がまさにそうでしたよね(笑)

一同 (笑)

今回は座談会形式で、倉敷中央病院のハートチームを代表する 4 名の方々にお話を伺った。終始柔らかな雰囲気の中、ユーモアも交えつつ真剣な議論が交わされる様子からは、日頃の円滑なコミュニケーションが垣間見えた。判断の大前提として「患者さんのために」という言葉を自然に口にされる姿勢は、医療従事者にとっては至極当然のものなのかもしれない。だが、その共通の想いこそが、日々の何気ないコミュニケーションの礎となり、淀みないオペレーションを通じて安全・安心な医療の提供へと繋がっているのだろう。

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